私たちは同族企業の応援団です

私の実家は江戸時代から約230年続く石屋という家業を営み、学生時代に兄弟で話し合った結果、私の弟が後継ぎとなって、数名の従業員を雇っています。私自身が家業を持つ家の長男であることから、子供の頃から「家業=ファミリービジネス」を意識して生きてきました。
同級生の中にも町の工場やお店を家族で営む家の子どもたちがたくさんいました。ですから、私は身近に家業のさまざまな問題も見聞きしてきました。もっとも大きな問題は、継承に関するものです。跡継ぎがいなくて廃業せざるを得ない企業も多いと聞きます。また親から子の世代へ継承されるとき、その年齢差は30歳くらいあるのが普通です。大企業では見られない世代ギャップを抱えて、また価値観の相違を持ったまま事業承継という難題に立ち向かうのです。これを同族、簡単に言えば家庭の中で問題解決をしようとするのですから、様々な葛藤や対立が長続きするのもうなづけます。そして従業員たちはその状況を知っているのですが、見て見ぬふりをしているのです。

日本では企業総数の99.7%が中小企業です(2016年統計)。そして大企業を含めて、日本の全企業の90%以上は同族企業です。世界でもこれほど同族企業が多い国はほかに例がありません。
中小企業は日本全体の付加価値額の52.9%を生み出しています(2016年統計)。これらの数字から推定できることは、日本経済が生み出す価値のおよそ半分は同族企業がつくりだしているということなのです。ということは、同族企業にこそ、日本経済の将来を考えるときに、同族企業の問題状況を知り、成長の可能性を発見する必要があるのです。

振り返ってみると、私たちが過去行ってきたチームコーチングのほぼすべてが同族企業で実施されたものだったのです。この事実に気づいたとき、私は驚きました。すでにたくさんの同族企業を応援してきたことが分かったのです。

同族企業は古臭いとか、社風を変えられないとか、合理的な経営判断をしていないとか、親戚が足を引っ張っているとか、後継者がまだ若くて社員が信頼していないとか、様々なネガティブな情報が耳に入ります。
でも実際はどうでしょうか。同族企業は実は強いです。財務基盤がしっかりしている企業が多いというのも特徴でしょうか。経営者はお金がないとこぼしますが、資金ショートしそうになると会長の妻、つまり社長の母親がどこからか引き出してくるというミラクルも起こります。冗談のような本当の話です。
また固有の顧客層を掴んでいる場合も多いです。助けてくれるお客さんがいる。地域と密接に繋がっている。新規参入してこないような伝統産業の場合、大きく発展することは望めなくても利幅を確保できる。固有の技術を伝承している。

もちろん同族企業固有の問題もあります。絶対的権力を振るう創業家出身社長の長期政権で組織が腐敗しているが誰も指摘できない。親族の確執。親子の断絶。社員たちのあきらめ。前社長に雇われた古参の社員が新社長に見せる抵抗。これらの問題は感情が絡むだけに解決が難しく、隠されていくのです。

一流大企業は人材も多様で豊富です。なおかつ潤沢な資金がありますから、有名コンサルティング会社と契約して、専門的知見を常に得て、改善に次ぐ改善をしています。
それに対して、中小の同族企業はどうでしょうか。有名コンサルティング会社と多額の契約金を支払って、継続的に経営指導を受けている企業はどれほどあるでしょうか。勉強熱心な若手社長が青年会議所のネットワークや業界のネットワークを活用して全国飛び歩いて、新しい知識を学んでは来ているものの、社員たちには見向きもされない状況に陥ることもあります。
さて、中小の同族企業が経営の王道に従って、しっかりとわが社の状態を見直し、社員たちの意見をもとにベクトルを共有するだけでも、売上が変わるのです。大企業が売り上げを150%にすると言ったら眉唾ですが、中小企業の場合はあり得るのです。本格的な企業戦略や戦術を、時間を止めて、議論を重ねて合意に至るだけで、ミラクルが起きることがあるのです。

チームコーチングは企業の創業の精神、存在理由、顧客に提供する本質的価値、強み、固有技術などの棚卸からはじめて、何をゴールに、どのように経営していくのかをシンプルにまとめていく作業をします。これらの作業を経営者が孤独に行ってはいけません。三人寄れば分珠の知恵と言われるレベルの合意に至れば良いのです。このとき、はじめて経営者は社員たちを信頼していこうという気持ちになるのかも知れません。

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