リフォームとは何かを再定義

今回はリフォーム事業を手掛ける都内の小さな建設会社のお話です。

かつて、リフォーム事業で急速に売り上げを伸ばしましたが、社員たちの離反により窮地に立たされ、あわや倒産かという状況まで追い込まれたことがある社長から依頼を受けて、「経営リーダー向けのコーチング」を行いました。この8月のことです。

前向き、かつ純粋な気持ちで経営に携わっている社長の話には感動しました。これは応援させていただきたいという思いが強くなりました。
たいへんなご苦労の末、経営を立て直してきましたが、過去の手痛い体験と失敗は裏切った社員たちのせいだという強い被害者意識を持っていた社長でしたが、すべては自分が引き起こしていたことだったのだと深い気づきを得て、社会への貢献を意識しながら、数少ない社員を教育し、信頼関係を築きながら、仕事を進めた結果、1年で業績も大きく回復してきたという状況でした。

もう一段の飛躍のために、全社員でチームコーチングを行うと決断し、2020年の9月に第一回目の「一枚岩会議」を実施しました。
社員でもある大工たちは「俺は会議だの研修だのは大嫌いだ」と主張し、いつもであれば会議や社内勉強会の途中でも「ちょっと現場に行ってくる。そちらの方が大事だ」と出ていってしまうような、根っからの職人気質の男たち。
ニッカボッカ姿で頭にタオルを巻いた若手の大工が、「一枚岩会議」が始まる直前に、初対面のチームコーチに対して、「先生、俺は座っていることが苦手だから」と伝えて煙草を吸いに会議室を出ていく光景には苦笑せざるを得ませんでした。

参加者は全社員と契約社員のすべてで7名。社長の他に営業担当2名、大工2名、経理担当、IT導入担当、ホームページ担当各1名。半数は好奇心あふれる目つきで、残りは怖れから来る懐疑心が表情から読み取れました。
時間通りに会議をスタートすると、チームコーチは時間をかけて、「一枚岩会議」はどのように進行されるのか、そのメリットと可能性は何かを分かりやすく伝えていきました。まずは会議が心理的に安全であるということを頭と体で理解してもらわないと、メンバーはなかなか警戒心を解いてくれないと判断したのです。
チームコーチ2名の自己紹介が終わり、続いて参加メンバーに自己紹介をしてもらいました。私たちはこれを「チェックイン」と呼んでいます。参加表明のようなものです。
お題は「名前とこの会社での役割。そして、なぜ自分は社長から一枚岩会議に参加するように求められたのかを語る」というものでした。それぞれの話し方の中に個性が現れていました。チームコーチにとっては初めてお会いするメンバーの個性や意欲、ときには抵抗を知るうえで役に立つ時間となります。

チェックインが済んで、発言者には温かい拍手が送られ、いよいよ会議が一段と深まっていきます。チームコーチはメンバーが会議に興味を持てるように、わが社に関する話しやすいテーマを一つひとつ提供していきます。チームコーチは答えを持っているのではなく、「問い」を持っているのです。メンバーは話し合いながら腹に落ちる答えを探求していきます。

組織が成長するためには、その組織の真の強みを徹底的に磨き上げて、お客様が望んでいる以上の価値に結び付けなければいけません。このことは誰でも分かっていそうなことですが、社内のメンバーだけが暗黙のうちに理解しているのと、チームコーチング手法で導き出される内容とは異なることが多く、「そういうことだったのか」というため息まじりの感想が漏れてきます。

わが社の強みと弱みをしっかりと分析し、マーケットのフォローの風とアゲインストの風を把握し、世の中のトレンドを組み合わせていくと自ずと基本的な戦略が明らかになります。そのうえで、わが社の実情も共有していくプロセスに入りました。それは誰にとっても耳の痛い現実への直面となりました。勝ち戦になっていないことが判明したのです。

このとき、重苦しい空気を破るかのようにIT戦略を担う50代の契約スタッフが立ち上がったのです。彼は踏み込んだ議論をしてきた仲間たちとのつながりを感じ、また今後の我が社の可能性を直感して、男泣き状態で決意を述べました。皆が感動したシーンです。

さて2日目に入り、全メンバーが一枚岩会議の面白さを知り、怖れから抵抗していた大工さんも前に出て活発に意見を述べるようになりました。営業と職人が一体化してきました。
これからのマーケティング戦略を考えるときに、地域の同業者だけではなく、スウェーデン発祥で世界最大の家具量販店で日本にも出店しているIKEAのような新業態もリフォーム事業のライバルになりえると判断し、それを超える顧客価値を提供する必要性なども議論しました。

午後に入り、「今期の経営方針書はみんなに渡しているもんね。分かっているよね」と社長が口にしたので、チームコーチが素朴な疑問を投げました。「それは社長が書いたものですか?そこにはここにいる皆さんの意見が反映されていますか?」
すると、社長が「いや、顧問の先生に書いてもらったものです」と仰る。コンサルタントを顧問に雇っているのだと分かりました。そのこと自体は問題ではありません。問題は、コンサルタントがわが社の経営方針を決めているということです。顧問の先生とは日ごろ、コミュニケーションを頻繁に取っているとはいえ、社長は経営方針のまとめを丸投げしている。社長が絶対的な信頼を置いているのでしょうが、社長の生の声ではなく、外部のコンサルタントが書いた方針ですから、社員にはただのお題目にしか聞こえていなかったのも無理はありません。

そこで、思い切って、ここにいるメンバーたちと一緒に基本的な事業の方針を作ろうということになりました。そうして、わが社はリフォームやリノベーション専業で事業展開するとあらためて決意を固めました。
そして、そもそもリフォームとはどういうサービスなのかを深掘りしました。
英語では”reform”ですが、メンバーたちの熱い議論を聞いていて直感が働いたチームコーチはリフォームという言葉を分解して、”Re-Form+ing”として考えてみようと提案しました。

Formとは「型」という意味です。つまり元々の家や間取りという箱の組み合わせである「型」があった。その「型」には「生活スタイル」が染みついています。お客様が「型」を変えるとき、必ず「生活スタイル」の変化が伴っているのです。「リ・フォーム」とは、つまり「型」を再構築することで新しい生活スタイルへと移行していく意思をお客様自身が持つことになるのです。そういう人生の岐路に立っているお客様の気持ちに寄り添ったら、どのような提案ができるだろうか。しかも「生活スタイル」の変化は人生とともに「+ ing」で継続していくことになります。ここに焦点を当てたら、営業も現場の職人もお客様視点で徹底的に考えるようになるに違いない。その結果としてお客様とは長いお付き合いになる可能性が大きくなります。
その後、議論は一般論から具体的な作戦におよび、それぞれの役割が明らかになりました。

2日目が終わるとき、チームコーチもメンバーも全員が「チェックアウト」をします。このとき、最初は抵抗を示していたベテランの大工は感極まり、声を詰まらせながら、「自分はもう年寄りですが、この会社のために命がけで働かせていただきます。よろしくご支援ください」と発言しました。
こうして2日間が終えたときには、組織が「リフォーム」されて、一枚岩となった新しい組織のスタートを切ることが出来たのです。

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